怪獣たちの足元で、明日を考える。
第32話 Kindness

終わりのベルが鳴った後 ―― 勝ち負けより大事なもの

Gō Shiomi Gō Shiomi
終わりのベルが鳴った後 ―― 勝ち負けより大事なもの

終わりのベルが鳴った。

会場の音が戻ってきた。それまで聞こえていなかった観客の声、床を踏む音、審判の笛の残響。ずっと無音だったわけじゃない。試合中も音はあったはずだ。でも集中しているとき、人は音を聞かない。終わった瞬間に、世界の音量が急にMAXに戻る。

息が切れていた。膝をついた。

勝ったのか。負けたのか。

正直、最初はわからなかった。


数字のことは後回しにしろ

ガリョウが来た。肩を叩かれた。痛かったけど、その痛さが現実に引き戻してくれた。

🦖 ガリョウ

やったな。

🦕 ノビ

……勝ちましたか?

🦖 ガリョウ

ああ。でも今はそれより先に確認することがある。やりきったか。

クロワが静かに近づいてきた。手帳を持っていたが、今回は最初から開かなかった。

🐉 クロワ

試合の結果は記録する。でも一番価値のある問いはこうだ。「今日の自分は昨日の自分より何を学んだか。」勝ち負けは文脈に過ぎない。

🦕 ノビ

……怖かったけど、止まりませんでした。途中でやめたくなった瞬間があって、でもやめなかった。

🦖 ガリョウ

それが全部だ。

試合直後に膝をつくノビとそれを支えるガリョウ
勝敗より先に確認することがある。やりきったか。

一番しんどい時間

控室に戻って、3匹は黙って水を飲んだ。ガリョウはいつもより口数が少なかった。それが、かえって落ち着きを与えてくれた。

🦖 ガリョウ

試合の中でな、一番しんどい時間がある。それを越えた先に、答えがある。

🦕 ノビ

……一番しんどい時間、ありました。動きが重くなって、頭が「もういい」って言い始めた。

🦖 ガリョウ

で、どうした。

🦕 ノビ

動き続けました。考えるのをやめて、体に任せました。

ガリョウが静かに頷いた。

🐉 クロワ

それは「ゾーン」に近い状態だ。意識のノイズを切り離して、学習した動作だけが残る。数千回の練習の意味は、そのためにある。

🦖 ガリョウ

難しく言うな。要するに、練習が体を動かした。

🐉 クロワ

……まあ、概ね。

控室で水を飲みながら話す3匹
数千回の練習の意味は、一番しんどい時間を越えるためにある。

次の試合の話

翌日の朝、ガリョウが言った。

🦖 ガリョウ

次はどこに出る。

🦕 ノビ

……まだ考えてなかったです。

🦖 ガリョウ

昨日のうちに考えとけ。勝った夜は次の試合のことを考える。負けた夜もそうだ。感傷は二日以上つきあうな。

クロワが手帳を開いた。今度はちゃんと何かを書いていた。

🐉 クロワ

9月に大きな大会がある。出るなら今から準備を始めるべきだ。間に合う計算はある。

🦕 ノビ

9月……世界の舞台ですか。

🐉 クロワ

そうだ。勝ちたいなら、今日から逆算して動く。今日の試合で何が足りなかったか、そこから始まる。

窓の外で鳥が鳴いた。朝の光が差し込んできた。昨日の試合が昨日になって、今日が今日として始まった。


その夜、ノビはノートにこう書いた──

終わりのベルが鳴った後に気づくことがある。 結果は一つの答えで、問いはもっとたくさんある。 一番大事な問いは「次にどうするか」だ。

試合 · 結果 · 成長

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