怪獣たちの足元で、明日を考える。
第39話 Kindness

何を持っていくか ―― 荷物と覚悟

Gō Shiomi Gō Shiomi
何を持っていくか ―― 荷物と覚悟

出発まで3週間を切った。

荷造りを始めた。キャリーケースを開けて、まず道着を2着入れる。試合用と練習用。念のため、もう1着持っていくかどうかを考えた。

🐉 クロワ

試合だけなら2着で十分だ。3着目は荷物になるだけで、使わない確率が高い。持ち物に保険をかける人間は、練習にも保険をかける傾向がある。

🦕 ノビ

……意地悪な言い方ですね。

🐉 クロワ

事実だ。「もしもの時のために」という思考は、「うまくいかないかもしれない」という前提から来ている。荷物の量に、メンタルが出る。


何を持っていくか

ガリョウが道場で聞いた。

🦖 ガリョウ

何を持っていく。

🦕 ノビ

道着、サプリ、テーピング、圧縮袋……あとは普段の生活グッズで。

🦖 ガリョウ

技術は?

🦕 ノビ

……体に入ってます。

🦖 ガリョウ

覚悟は?

🦕 ノビ

……今、準備してます。

🦖 ガリョウ

荷物の中で、一番重いのはそれだ。

荷造りをするノビ
荷物の量に、メンタルが出る。

軽くする方法

クロワが言った。

🐉 クロワ

遠征の荷物を軽くする唯一の方法は、持っていかないことだ。

🦕 ノビ

当たり前ですね。

🐉 クロワ

でも実践できない人が多い。なぜか。持っていかないことへの不安があるから。その不安の正体は何かというと、「自分が不十分だという感覚」だ。道具で補おうとする。

🦕 ノビ

道具は補えないんですか?

🐉 クロワ

道具は条件を整えるだけだ。条件が整っていれば、あとは自分次第。逆に言えば、条件さえ整えば最低限でいい。

道着2着、テーピング2ロール、プロテイン小分け4日分、ビタミン。それだけにした。


覚悟という荷物

出発前夜、ガリョウが言った。

🦖 ガリョウ

覚悟は重いか。

🦕 ノビ

……最初は重かったです。でも今は、少し軽い気がします。

🦖 ガリョウ

なぜ軽くなった。

🦕 ノビ

「勝たなければ」から、「やることをやる」に変わったからだと思います。

🦖 ガリョウ

それが正しい荷物の持ち方だ。覚悟は目的ではなく、手段だ。「覚悟する」のではなく、「覚悟を道具として使う」。

荷物を担いで出発する3匹
技術は体に、覚悟は心に、余計なものは置いていく。

その夜、ノビはノートにこう書いた──

荷物は軽くした。 覚悟も、少し軽くなった。 重いものを全部置いていく必要はない。 手放せるものだけ、手放す。 それで十分だ。

準備 · 世界選手権 · 道具

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