警報が鳴ったのは、明け方だった。
東の海岸線から黒い影が這い上がってくる。外殻が鉄のように鈍く光る、見たことのない怪獣だ。その視線の先には港町があった。
ガリョウが真っ先に立ち上がった。目が変わっていた。クロワが地形データを読み始めた。ノビは――何をすればいいかわからなかった。
「まず避難経路を」とクロワが言いかけた時には、もうガリョウは走り出していた。
三つの矢、三方向
ガリョウは一直線に突っ込んだ。その衝撃波で、港の倉庫が3棟つぶれた。敵に到達する前に。
邪魔だ、どけ。
クロワは別の方角から回り込んでいた。しかしガリョウが予測不能な突進をするたびに計算が狂う。クロワの氷結ビームがガリョウの背中をかすめた。
Gを変数に含めると、あらゆるシミュレーションが破綻する。迷惑だ。
ガリョウが怒鳴った。「後ろから撃つな。味方を撃つ奴があるか。」クロワが冷静に返す。「味方が予測不能な動きをするほうが問題だ。」
何十年も一緒にいても、「一緒に戦う方法」は別の話だった。
ノビは戦場の端で立ち尽くしていた。路地の奥に人影が見えた。避難できていない住民だ。
無理です無理です無理です――あっ、あっちの路地にまだ人が!
誰にも聞こえなかった。
勝利の残骸
戦いは40分で終わった。ガリョウの拳とクロワの氷結が、偶然噛み合って止めを刺した。連携ではない。偶然だ。
被害状況を整理する。建物の倒壊、全体の約60%。うち敵の攻撃による破壊は40%。残りの60%は――我々の行動に起因する。
……。
ガリョウは何も言わなかった。自分の突進で潰した倉庫の跡を、じっと見ていた。あの岩のような指が、微かに震えていた。
震える手のメモ
夕暮れ。3匹は港町の外れの丘に座っていた。
勝った、んですよね。でも……これは、勝ちって言えるんですか。
誰も答えなかった。長い沈黙の後、クロワが口を開いた。
次は、こうはならない。私が全体の設計を担う。Gの突進経路を事前に計算し、被害を最小化するルートを算出する。ノビ、お前は住民の避難状況を記録しろ。我々の目が届かない範囲を、お前の目で補え。
……ああ。次は、街を壊さない。
ノビはノートを開いた。震える手で、ゆっくりと書いた。
「勝ったのに負けた。僕たちはまだ、一緒に戦う方法を知らない。でも、今日初めて、3匹で同じ方向を見た。」
3匹がバラバラに強いだけじゃ、守れないものがある。
その夜、ノビはノートにこう書いた──
ガリョウさんの指が震えていた。あんなに大きな手なのに。僕たちが壊した倉庫の数を、僕は正確に覚えている。3棟。その数字を消さないでおく。