焚き火の夜だった。
北の山脈を越えた先にある岩棚の台地。風がなく、星が近い。クロワは地図を広げて明日のルートを組み、僕は岩に腰かけて今日の記録を書いていた。ガリョウは火のそばに座って背中を僕たちに向けている。いつものことだ。群れの中にいるのに、どこか一人でいるような座り方。
そのとき、炎の光がガリョウの背中を照らした。
傷痕の光景
背中の中央を、肩甲骨から腰まで、三本の深い溝が走っている。鱗が生え直していない。何年、何十年分の時間が、あの溝に刻まれている。炎が揺れるたびに、傷痕自体が呼吸しているように見えた。
聞かないほうがいいかもしれない。
クロワは知っている。その声でわかった。あの傷の理由を、ずっと前から知っていて、ずっと黙っていた。
五匹の仲間
焚き火の薪が燃え尽きかけた頃、ガリョウが口を開いた。火を見つめたまま、独り言のように。
昔、仲間がいた。
5匹の仲間。ガリョウが若い頃、一緒に旅をした群れだ。毎朝一緒にスクワットをし、飯を分け合い、焚き火を囲んで明日の話をした。全員がガリョウを信頼していた。ガリョウもまた、自分が前に出れば誰も失わないと思っていた。
南の火山帯で、十数体の敵に遭遇した。逃げる選択肢もあった。でもガリョウは前に出た。仲間を背中に庇い、一歩も退かなかった。
背中に三本の爪を受けたのはそのときだ。仲間を庇って敵に背を向けた。前を向いていた証拠が、背中に刻まれた。
俺は生き残った。一番強かったから。……強かったから、生き残った。それだけだ。
「それだけだ」と言った声が、かすかに割れた。あの鉄壁の心に、まだ治っていない傷があるということだ。
鍛える理由
弱さは罪じゃない。弱いまま戦場に立つのが罪だ。だから俺は鍛える。自分を。周りを。もう二度と、「足りなかった」とは言わせない。
全部がつながった。なぜあんなに厳しいのか。なぜ毎朝スクワットをするのか。なぜ僕に「走れ」と怒鳴るのか。あの叱責の全部が、失った仲間の場所から来ていた。
私がガリョウと組んでいる理由が、少しわかったか。
……はい。
ガリョウの強さは、失った分だけ重い。それを知って、なお隣に立てるかどうかだ。
クロワはずっと前から知っていた。知った上で、隣に立ち続けていた。ガリョウが二度と「足りなかった」と言わなくて済むように、クロワの頭脳がガリョウの拳を補う。それがこの群れの構造だった。
僕はノートを開いた。手が震えていた。でも書いた。「ガリョウさんが強い理由がわかった。あの傷痕は、勲章じゃない。もう届かない仲間への、終わらない謝罪だ。だからガリョウさんは鍛え続ける。」
書きながら涙が落ちた。ガリョウは何も言わなかった。泣くなとも、気にするなとも。ただ黙って、僕が泣くのを許してくれた。あの沈黙は、優しさだった。
しばらくして、ガリョウが薪を一本、火に放り込んだ。炎が跳ね上がり、背中の三本の溝がくっきりと浮かび上がった。そしてまた、闇に沈んだ。
その夜、ノビはノートにこう書いた──
ガリョウさんが「走れ」と怒鳴るとき、あの声はたぶん、僕じゃなくて、もういない五匹に向かっている。