世界チャンピオンになった翌朝、ノビは普通に目が覚めた。
6時14分。空腹だった。肩が少し痛かった。昨日の決勝で引っ張られた跡だった。窓の外は晴れていた。ロングビーチの朝だった。
何かが変わった気がしない。
変わっていないのかもしれなかった。変わったのかもしれなかった。よくわからなかった。
朝食を食べながら、昨日のことを思い返した。決勝の2ポイント。相手の顔。審判の手。
……特別な感じがしないんです。
そういうものだ。
ガリョウはコーヒーを飲みながら言った。驚いていなかった。
ゴールは目的地じゃない。通過点だ。着いた瞬間に、次が見える。
次……
ADCC世界選手権。12月。ノーギ世界選手権。ムンジアル防衛。
クロワはすでに次を検索していた。
午後、会場に戻った。他のカテゴリの試合が続いていた。
タタミの隅で、小さな子供が練習していた。たぶん10歳くらい。うまくいかなくて、泣きそうな顔をしていた。コーチが何かを言っていた。子供は頷いて、もう一度やった。
ノビはしばらくそれを見ていた。
自分も、ああだったんでしょうか。
今もそうだ。
え?
うまくいかないことは、まだある。次の試合でも、必ずある。それがなくなったら、練習は終わりだ。
夜、メダルを眺めた。金色だった。重かった。
これ、どこに飾ればいいんでしょうか。
一般的なアスリートは、トロフィーケース、寝室の壁、またはスポーツ用品店の棚を利用する傾向がある。
見えないところにしまっておくといい。
なぜですか。
毎朝それを見たら、自分はもう頂上にいると思い始める。頂上にいると思ったら、登るのをやめる。
ノビはメダルをバッグの底にしまった。
日本への帰りの飛行機を予約した。3日後の便。
窓の外、夜のロングビーチが光っていた。太平洋がその先にあった。向こう側に、道場がある。タタミがある。
帰ったら、すぐ練習に行きます。
知ってた。
ガリョウはそれだけ言った。
続きがある。それがいい。