怪獣たちの足元で、明日を考える。
第42話 Strength

タタミの上で ―― 世界選手権、試合の日

Gō Shiomi Gō Shiomi
タタミの上で ―― 世界選手権、試合の日

タタミに立った。

相手もいた。審判もいた。観客の声もあった。でもノビには、タタミの感触しか聞こえなかった。足の裏が、グリップが、その質感だけがリアルだった。

「始め」


1試合目。相手はブラジルの選手だった。最初のグリップ争いで、ノビは相手の強さを感じた。引かれる。引っ張られる。でも、流されなかった。

道場で何百回もやった動きが出た。考えていなかった。体が動いた。

🦖 ガリョウ

体が覚えていた。

試合後、ガリョウはそれだけ言った。

ポイントで勝った。


2試合目。相手はポルトガルの選手だった。スタイルが違った。引き込みが速かった。ノビは意表を突かれた。下のポジションになった。

まずい。

でも、焦らなかった。理由はわからない。焦らなかった。

ガードポジションから動き続けた。スイープを狙った。半分成功した。上に戻った。残り1分で2点リードした。そのまま終わった。

🐉 クロワ

スイープ成功率、今日の全試合の中で82パーセンタイル。

クロワが数字を出した。

🦕 ノビ

……それって、すごいんですか。

🐉 クロワ

上位18パーセントに入る。


決勝。

会場の一角に、ひときわ大きなタタミがあった。そこに連れていかれた。

相手はフランスの選手だった。大きかった。ノビより頭一つ分背が高かった。

握手をした。相手の目を見た。怖かった。怖かったけど、逃げなかった。

「始め」

最初の30秒は何もなかった。ただ動いていた。グリップ、崩し、タイミングを測る。相手も測っていた。

3分が経った頃、ノビはタイミングを見つけた。ほんの一瞬の隙。引き込んで、足元を崩して、引き込んだ。タケダウンを取った。2点。

残り4分、守った。

🦖 ガリョウ

守ることも、柔術だ。

ガリョウの声が聞こえた気がした。

残り10秒。相手が動いた。ノビも動いた。何かが起きた。審判の笛。

試合終了。

ノビは立ち上がった。審判が右手を挙げた。

ノビの手だった。


🦕 ノビ

……勝ちました。

🐉 クロワ

世界選手権、優勝。

🦖 ガリョウ

よかった。

ガリョウは短く言って、タオルを投げてよこした。

ノビはタオルで顔を覆った。しばらくそのままでいた。誰にも見せないために。


タタミを降りた後、外に出た。

海が見えた。昨日見た、同じ太平洋だった。でも、違って見えた。

遠くまで来た。それが、よかった。

世界選手権 · 試合 · 勝利 · 柔術

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