怪獣たちの足元で、明日を考える。
第41話 Strength

ロングビーチ ―― 世界の大きさを知る日

Gō Shiomi Gō Shiomi
ロングビーチ ―― 世界の大きさを知る日

ロングビーチ・コンベンションセンターに入った瞬間、ノビは立ち止まった。

タタミが見えた。数えた。10面、15面、20面——数えるのをやめた。広すぎた。至る所で誰かが動いていた。アップをする選手、テーピングをするコーチ、カメラを構えるスタッフ。言葉が8種類以上飛び交っていた。

🦕 ノビ

……でかい。

🐉 クロワ

参加者2,300人。出場国64カ国。2万平米の会場面積。タタミは24面同時進行。

クロワは数字で答えた。数字でしか答えられないのか、数字が一番正確だと知っているのか、ノビにはまだわからない。

🦖 ガリョウ

大きいか。

ガリョウが来た。

🦕 ノビ

……はい。

🦖 ガリョウ

世界は広い。それがいい。

ガリョウはそれだけ言って、ウォームアップエリアの方へ歩いていった。


登録をすませて、スケジュール表を受け取った。自分の試合は翌日の午前10時だった。

会場を出て、ホテルに戻る途中、ノビは海を見た。太平洋がそこにあった。日本でも同じ海を見ていたはずなのに、こちら側から見るとまったく違うものに見えた。

🦕 ノビ

向こう側に日本があるんですよね。

🐉 クロワ

直線距離で約9,000キロ。飛行機で10時間。太平洋の正反対側。

🦖 ガリョウ

遠くまで来た。

ガリョウが静かに言った。責めているわけでも、ほめているわけでもなかった。ただ、事実として言った。

遠くまで来た。

ノビはその言葉を反芻した。何かを確かめるように。


夜、スケジュール表をもう一度見た。午前10時。相手の名前。国旗のマーク。

どんな選手かは知らない。動画を探したが見つからなかった。クロワに聞いた。

🐉 クロワ

データなし。国際大会での実績は公開されていない。未知の相手。

🦕 ノビ

それって……不安じゃないですか。

🐉 クロワ

データがないことは、相手にとっても同じ。

ノビは少し黙って、それから笑った。

🦖 ガリョウ

明日、自分の柔術をやればいい。それだけだ。

ガリョウはライトを消した。


目を閉じた。波の音が遠くから聞こえた。

世界は広かった。それがよかった、とノビは思った。日本にいるままでは、この広さを知らなかった。

広さを知ることが、最初の一勝だった。

世界選手権 · ロングビーチ · 試合 · アメリカ

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